ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクトが2016年8月23日~31日、旧ソビエト連邦のセミパラチンクス核実験場があったカザフスタン共和国を訪問した 報告書がはだしのゲンをひろめる会に届きました。
報告書のなかで「はだしのゲン」に関わる活動報告とスタディツアーに参加した渡部久仁子さんの感想を紹介します。
<訪問期間>2016年8月23日~ 8月31日
<参加者> 渡部久仁子、中原有貴、廣目千恵美、小畠知恵子
専門家:星正浩(広島大学名誉教授)、野宗義博(島根大学医学部教授)
<目 的>
①カザフスタンの元留学生と次期留学生および日本語学習者との交流
②セミバラチンスク核実験場閉鎖25周年記念式への参列
③小児病棟への慰間と医薬品購入費として寄付金贈呈
④セメイ医学大学主催国際会議参加
<内 容>
①渡部久仁子さんプレゼン「はだしのゲンが見たヒロシマ」
◆漫画家。中沢啓治氏の被爆体験証言DVD
「はだしのゲンが伝えたいこと」の上映
◆マンガ「はだしのゲン」の説明
◆マンガ「はだしのゲン」使ってヒロシマを伝える活動について
②ツアー参加者。中原有貴さんの発表
◆日本の若者の「カザフスタン及びセミパラチンスク核実験被害」の認識
◆今後の日本とカザフスタンの交流への期待
③交流
◆広島とセメイに関する双方向の質疑応答形式の対話
◆贈呈式 ヒロシマ関連図書など
贈呈品・マンガ「はだしのゲン」ロシア語版(全5巻)。絵本「おりづるの旅」ロシア語版と日本語版
・折り鶴再生折り紙「ZUTT0 0RIZURU ZUTT0 0RIGAMI」 10セット
マンガ「はだしのゲン」がまだ知られていなかったので、まず初めに当時6歳だった直接被爆者の作者・中沢啓治氏の体験を基に描かれ、国内外で幅広い世代に読まれていることをその内容とともに、映像と絵を使って紹介した。その後、マンガ「はだしのゲン」に出てくる場所が広島市内に実在することや、それを巡ることで二次元のマンガから、当時子どもだった筆者の体験を立体的な想像を試みる「はだしのゲンフィールドワーク」について説明した。
プレゼンを通して、実体験者ではない世代が被爆体験を伝承し生かすためにも、キノコ雲の下の地獄を体験している被爆者の目線と、客観的に検証するメタの目線で実相を知ることが大切だと思っていて、そのための入国のような役割を果たすことができる作品だとも思っていると話した。さらに若い世代に馴染みのある漫画という手法で、大人に巻き込まれる弱い立場・子どもの目線で描かれていることや成長する過程で壮絶な体験を「どう生きるか」というテーマに昇華させているところにヒロシマの形成を感じていて、世界中で読んで欲しいと思う理由になっていることを伝えた。通訳の学生の力を借りて日本語でのプレゼンだったが、全員が最後まで関心をもって真剣に聞いてくれた。
◆マンガは若い世代に伝えるにはいい方法だと思う。
◆戦争や原爆のことを知らない世代が、市井の人の体験を直接聞き、その目線をもつて何があったのかを想像。理解しようとすることは重要だと思う。
◆同じ過ちを繰り返さないために、主観的目線と客観的目線双方で物事をとらえ、考える必要がある。
◆広島の経験の伝承・継承や平和学習という取り組みが理解出来た。との感想をもらった。
<スタディツアーを終えて・感想>
渡部久仁子
今回、カザフスデンでマンガ「はだしのゲン」を通じて、中沢啓治さんの被爆体験とメッセージを若者に話すことができる機会をいただきました。対象者の学生がマンガ「はだしのゲン」について知らないうえに、通訳を挟んで限られた時間内に伝えるという難しさもありましたが、真剣に聴いてくださった学生の皆さんのおかげで、笑顔で話し合うことができました。マンガの利点であるビジュアル表現が言葉の壁を和らげ、イメージ源になり、世代や文化を超えて、ヒロシマの経験を共有することができたと思います.また、交流した大学や日本語学校に、NPO法人はだしのゲンをひろめる会とヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクトにご協力いただき、ロシア語版「はだしのゲン」の寄贈を行うことができました。ありがとうございます。
良い出会いは活動を続ける力になります。これからも、広島を拠点にマンガ「はだしのゲン」と中沢啓治氏の記録を広く、長く見ていただけるように精進しようと心新たにすることができました。(後略)
<渡部久仁子さんの紹介> 1980年広島市生まれ。2011年、マンガ「はだしのゲン」の作者・中沢啓治さんのドキュメンタリー映画「はだしのゲンが見たヒロシマ」、学校教材用DVD「はだしのゲンが伝えたいこと」を製作。.以降、上映会やゲンフィールドワークなどを通じ、マンガ「はだしのゲン」の一読・再読を呼びかけている。