大連外国語大学日本語科学生から「はだしのゲン」感想文が届く

 2017年7月に本会から中国大陸の大学関係者20人に「はだしのゲン」英語版14セット、日本語版22セットを寄贈しました。このほど大連外国語大学日本語科の学生から「はだしのゲン」読後感想文(2通)が中国語版翻訳者の坂東弘美さん方に届きました。同大学の担当教員及び当該学生の了解を得ましたので本会ホームページに紹介します。

 

 『はだしのゲン(日本語版)』を読んで            

 2017.12.大連外国語大学日本語学部学生より

◎私はこの本を二回読みました。とても長いので一気に読むことはできず何回かに分けて読みました。この本は本当にとても素晴らしいです。

 迫真に描き出された物語には、とても引き込まれ、またその絵柄は素朴で親しみやすいです。読みながら、ある種の不思議な衝動が私の中に沸き起こりました。

 小さい頃、祖父の家に暮らしていた私が見るものはすべて、(今日では)「抗日神劇」(と揶揄される荒唐無稽な)TVドラマでした。日本鬼子がどんなに(残虐に)村を焼き、人を殺し、抗日戦士に酷い仕打ちをしたかとということばかりを毎日毎日、目にしていたのです。

 小学校から大学まで教科書には日本の悪い論評しか書かれていませんでした。日本の庶民の立場からの記述というのは故意に無視されていたのです。

 戦争が嫌いなのは世界中の誰もが同じはずです。但し、幼少時から大人になるまで、私の世界観の中で、日本国民もまたそうであるということは考えたこともなかったのです。

 この漫画は私に新しい物の見方を提供してくれました。私の世界観を刷新し、より客観的な目で戦争と向き合わせてくれるものです。

 私自身は戦争を題材にした本が嫌いではありません。なぜなら、読み終わった後で、多くは心が奮え、熟考させられ、深い思いに引き込まれるからです。

 一旦戦争が起きれば、この本に書いてあることは遠い昔のフィクションではなく、一瞬で現実になり、それをこの本は警告しているのです。

 かつて体験したことが無いため、戦争のもたらす報いに対して私たちは感覚が麻痺している所があります。

 ですから、日本人の危機意識に学び、戦争への警戒を常に怠らないようにすべきです。戦争をより正しく理解してこそ、より強く反戦の立場に立てるのです。この漫画の著者には、大きな大きな賛辞を送りたいです。

 

◎これは私が初めて読んだ、そして、私にとって特別な意義を持つ本となりました。以前はただ日本の原子爆弾の事件は、歴史の教材の中の一部分にすぎず、単なる文字であり、さしたる感情はありませんでした。

 私は漫画の魅力は、ひとコマひとコマの描写を通して、小さな紙の中により生き生きとした形象を表現できることだと思います。

 原爆投下はとても悲痛ではありますが、目を背けてはならない題材です。時間の問題があって、私はただ漫画の前半部分だけ見たのですが、主役のお父さんは平和を求めて戦争に反対し、投獄されました。そのため彼の子供達も学校で虐められ先生からも侮辱を受けました。隣近所の人々にも散々なことを言われました。

 しかしこのような環境下で、子供達は毅然としてお父さんの理念を貫きます。――戦争に反対し、平和を訴えたのです。

 私はこれも作者が読者に一途に伝えたいことだと思いました。またまわりから孤立して、米さえ手に入れられない状況の中で、まるで砂漠の中で一滴の水を送るように、朝鮮人は彼らに米を分け与えました。

 苦難に満ちた暮らしの中で、変わらず支えてくれ、信じてくれる人がいるということを。まさにこのことだけでも生きていく力がわいてくるものです。そう思いませんか?

 この世界には友好が足りないのかもしれません。しかし、少なくとも私たちの心の中には優しさがあります。そして、正しい事を成すのであれば、何を恐れることがあるでしょう。

 それになにより、私は一人ぼっちではなく、この道には平和を支えようとし、正義を信じる多くの人々がおり、彼らと共に歩むことができるのですから。

 

 

はだしのゲン・紙芝居

出版物の紹介


はだしのゲン
『わたしの遺言』
 中沢啓治 著

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