原水爆禁止2017年世界大会・国際会議 参加報告

8月3日~5日、広島市内で開かれた原水爆禁止世界大会・国際会議の開会総会にて

 

原水爆禁止2017年世界大会・国際会議   参加報告

(1)江守道子(はだしのゲンをひろめる会副理事長)  

  1955年8月から始まった原水爆禁止世界大会が、今年も8月3日から9日にかけ広島と長崎で開催されました。私は、そのうち3日と4日の2日間広島で開催された国際会議に、はだしのゲンをひろめる会を代表し昨年に続き2回目の参加をしました。今年のテーマは「核兵器禁止条約を力に、核兵器のない平和で公正な世界の実現」でしたが、世界26か国から海外政府代表をはじめ、国内外の平和運動活動家が約260名一堂に集い、会場は開始前から熱気に包まれていました。一昨年、白崎良明先生が国際会議で初めて「はだしのゲン」寄贈運動について発言して以来、今年で3回目となり、これまで以上の寄贈先を目指し事務局の大田さんと共に参加しました。

 総会が始まり、冒頭、野口邦和運営委員会代表が「核兵器廃絶を求める運動が実り、核兵器禁止条約を交渉する国連会議において、核兵器禁止条約は国連加盟国の63%が相当する122か国の賛成で採択され、その瞬間、議場は総立ちになり大きな拍手と歓声に包まれ各国政府代表と市民社会代表が抱き合って喜んだ歴史的な幕開けになった」と報告。また、条約の内容が原水爆禁止世界大会の主張と重なっていることにもふれ、「条約は世界大会が積年にわたって議論してきた到達点。一刻も早く発効することを祈念したい。被爆体験の継承、ヒバクシャ国際署名に取り組もう」と熱く語りかけました。被爆者代表・日本被団協の藤森俊希事務局次長は「条約が採択された時、原爆犠牲者など条約を目にすることのできなかった多くの先達が頭に浮かんだ。条約採択を被爆地に報告し、喜びを分かち合いたい」と、その胸の内を語ったのが、とても印象的でした。

 その後、質疑に入り、漫画「はだしのゲン」寄贈運動を英語で紹介。被爆者の証言活動も高齢化と共に困難となっているため、広島で被爆し、たくましく生きた故中沢啓次氏の自伝「はだしのゲン」の生きざまを通し、兵器の悲惨さ、戦争の愚かさ、平和の尊さを学んでもらいたいと訴えました。

 すでに英語、ロシア語、中国語、韓国語をはじめ世界24か国語に翻訳され、ゲンは少しずつ世界中を駆け巡っています。私の発言後、早速、中東・アフリカの高校や大学の教員グループの一人から申し込みがあり、「同行した仲間も紹介したい」と言われ、会場の一角でアルジェリア、エジプト、ヨルダンをはじめ、7か国からの教員の方々に事務局の大田さんと共に説明。そして彼らの所属する10数校への寄贈の申し込みを受け、今後も訴え続ける決意をしました。

『Barefoot Gen』を寄贈した中東の高校・大学の教師たち(右から3人目が筆者)

 午後から第一セッションに移り「広島・長崎の原爆被害、核兵器の非人道性、ヒバクシャの闘い」をテーマに議論。ノーモア被爆者訴訟弁護団 藤原精吾団長、韓国原爆被害者協会 朴 ジョンスン氏はじめ、マーシャル諸島やオーストラリア先住民核実験被害者、ベトナム枯葉剤被害者などから被爆の告発がありました。それぞれ、想像を絶する体験や今日に至る放射線の世代を超えた人体への影響などを詳しく語り、参加者一人ひとりの胸に深く刻まれました。

 夕方から始まった、第二セッションでは、「核、兵器禁止条約から廃絶へ―平和運動、市民社会の役割」をテーマに、日本原水協の安井正和事務局長、米、英、仏、ベトナム各国の市民・政府代表が「核抑止のイデオロギーを非合法化し、根底から変えよう」とジャッキー・カバソ(米・西部諸州法律財団事務局長)氏と討論。日本共産党を代表し緒方靖夫副委員長が「今や、核禁止から完全廃絶の時代。そのため核兵器禁止条約の持つ画期的・先進的重要性の認識を高め、世論に広げること。各々が、自国の政府に働きかけ条約を受け入れるよう迫るためにも『ヒバクシャ国際署名』に取り組もう」と呼びかけ、被爆国でありながら条約に反対する日本政府への粘り強い働きかけが必要だと痛感しました。

 2日目の第三セッションのテーマは「核兵器のない世界へ行動と共同ー核抑止力論の克服、戦争の平和的解決、放射能被害の根絶、安全な暮らしと環境」でした。アメリカ、国際平和ビューロー

 ベトナム、日本代表のいずれも核兵器禁止約が新しい時代を作り、これまで以上に各国政府に圧力をかけ続け、条約の履行を働きかけることが重要との考えで一致。午後からの第一分科会では、78歳元教師の女性の被爆証言を聞き、改めて平和の貴さを思い知りました。

 戦後72年が過ぎ、平和を享受してきたはずですが、世界のいたるところで戦争は今なお続いています。また昨今、日本をはじめアメリカ、朝鮮半島では、連日、核をめぐり非難合戦が続きます。私達は、今こそ一人ひとりが「核のない平和な世界」実現に向けて行動する時です。共に頑張りましょう! 

◎『はだしのゲン』寄贈報告

 今年の国際会議にはNPO法人はだしのゲンをひろめる会から2人、プロジェクト・ゲンから2人参加し、会場で『はだしのゲン』英語版(全10巻)やアラビア語版(第1巻)等の寄贈希望を呼びかけたところ アメリカ、レバノン、チュニジア、イスラエル、モロッコ、ヨルダン、パレスチナ、フィリピン、アルジェリアの9か国14人に英語版18セット、アラビア語版21冊を寄贈することができました。 

 

8月5日~6日、広島市内で開かれた原水爆禁止世界大会・開会総会にて

(2)大田健志(はだしのゲンをひろめる会事務局)

 今年も原水爆禁止世界大会・広島では、8月6日に「ヒロシマデー集会」が広島県立総合体育館・グリーンアリーナで開催され、国内外から約2,000人が参加しました。集会では、日本原水爆被害者団体協議会の田中熙巳代表委員、そして非核国家オーストリアのマルチン・クリューガー外務省軍縮軍備管理不拡散局次長の発言が印象的でした。

 田中熙巳氏は、まず今回の世界大会が歴史的・感動的な核兵器禁止条約採択後の開催であることを喜びたい、そしてヒバクシャ国際署名で目標にしていた2020年よりも早く条約実現ができたことも嬉しいことだ、と発言されました。また、条約の文中にヒバクシャに関する記載が入ったことにも触れ、感謝とともにヒバクシャの長年の活動の意義を確信した、とも語っておられました。メッセージの最後には、「武力では市民社会の安全は守れません!」と高らかに宣言し、日本政府を条約に参加させることが必要だと訴えました。

 マルチン・クリューガー氏も、会場の盛り上がりをみて、この活動が間違ったものではないと確信した、と笑顔で話されていました。核兵器禁止条約は9月20日に署名が始まり、50カ国が批准した後、90日後に発効します。クリューガー氏は、ぜひ2018年中に条約発効を達成し、2019年にはオーストリアの首都ウィーンで第1回の締約国会議を開催したいと力強く展望を述べていました。

 他にも各国の政府代表からの連帯の発言や、青年企画のトークセッション「いかに政治を変えていくのか」でも国内外の発言者から、市民そして国を越えた連帯の必要性、その実現への未来志向な取り組み・希望が示されました。

 最後に「広島からのよびかけ」を採択。すべての国の核兵器禁止条約への参加や、日本政府がアメリカの「核の傘」から脱却する必要性、そのためには9月20日から9月26日に実施予定の世界同時行動「平和の波」に呼応した「草の根」の運動によって、核兵器のない世界をつくる決意が示されました。鍵となるのは、私たちひとりひとりが考え、行動し、世界を変えていく「草の根」の取り組み。それこそが、平和で核なき未来をつくるのだと再確認することができる世界大会でした。

 

はだしのゲン・紙芝居

出版物の紹介


はだしのゲン
『わたしの遺言』
 中沢啓治 著

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