中東の平和を願って 『はだしのゲン』アラビア語版が出版

  漫画「はだしのゲン」第一巻のアラビア語版が出版されたことにつき、本会の浅妻南海江理事長のコメントを付けて大きく掲載した北陸中日新聞夕刊(2015年2月24日   PDF:159KB)を紹介します。

 

中東に平和を 「ゲン」が訴え エジプトの教授、アラビア語版出版

 原爆投下の悲惨さを伝える漫画「はだしのゲン」第一巻のアラビア語版が出版され、記念の催しが二十三日、エジプトの首都カイロで開かれた。翻訳したカイロ大学日本語学科教授のマーヒル・シリビーニーさん(56)は「日本のように平和が実現できれば、(中東の)経済発展も可能になる。平和の大切さを学んでほしい」と訴えた。 (カイロ・中村禎一郎)

 シリビーニーさんは、中東の不安定化が強まるなか「アラブの青年に平和な将来をつくってほしいとの願いを込めた」と、翻訳に取り組んだ動機を説明。「第二巻以降の翻訳も」と意欲を燃やしている。

   シリビーニーさんは一九八七年から五年間、広島大大学院に在籍。翻訳は二〇一三年に立案した。第一巻のアラビア語版は独立行政法人「国際交流基金」の支援を受け、エジプトの出版社から昨年十二月に二千部を発行した。「はだしのゲン」は全十巻。現在は二十カ国語以上に翻訳されている。

   エジプトをはじめとする中東各国では、日本の印象を原爆と重ねるアラブ人が少なくない。本紙が昨年末にカイロで実施したエジプト人百人への簡易アンケートでは「日本といって思い浮かぶのは何?」との問いに、七人が「広島、長崎」と答えている。

◆「広まる意味、考えて」

   原爆投下後の広島で生きる少年を描いた「はだしのゲン」は、二〇一二年に亡くなった漫画家中沢啓治さん=享年(73)=の自らの体験に基づく。主人公の少年ゲンがたくましく成長する姿を描いた作品は平和教材として活用され国内ではドラマやアニメ映画、実写映画も作られている。

   一方で、一三年には、作品の一部に暴力的な描写があるなどとして松江市教育委員会が市内の小中学校に学校図書館で子どもの閲覧を制限するよう要請したことが分かり、全国で議論を呼んだ末、市教委が要請を撤回する騒動があった。

   この問題を機に昨夏、埼玉県東松山市の「原爆の図丸木美術館」は、絵本版のカラー原画や十五カ国語に翻訳された作品を展示する特別展を開いた。中沢さんが何を伝えたかったのか、あらためて作品を見てもらおうと考えたという。

   学芸員の岡村幸宣さん(40)は「原爆投下から時間の経過を経て、広い視野から被爆の体験だけでなく被爆者の生き方まで描いていることが、世界で読み継がれる理由だと思う。海外で紹介される意味を私たちもよく考える必要がある」と話す。

   「はだしのゲンをひろめる会」(金沢市)の浅妻南海江理事長(72)は「念願だったのでうれしい。さっそくアラビア語版を入手して、アラビア語圏に広めていきたい。ゲンが、アラブ諸国の平和に寄与することを願っている」と喜んだ。

*上記の外、朝日新聞(2015年2月24日   PDF:186KB)やNHKニュースウオッチ9などでも報道されました。

 

はだしのゲン・紙芝居

出版物の紹介


はだしのゲン
『わたしの遺言』
 中沢啓治 著

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