2017年IPPNW(核兵器廃絶国際医師会議)世界大会 参加報告

日本ブースで、IPPNW共同代表のティルマン・ラフ氏を囲んで記念撮影

 

 2017年IPPNW世界大会に参加して

核戦争を防止する石川医師の会世話人  武藤一彦

 久しぶりの海外渡航に、不安と期待が入り交じった心は、年をとったから減じたかというとそうでもない。「核戦争を防止する石川医師の会」は、長い間会員として過ごしていたが、保険医協会の理事を仰せつかったのを機会に、お世話役も引き受け、2年に一度開かれる世界大会に参加を希望した。それもイギリス・ヨークである。

 世界が、いや地球がどうなるか分からない時期に、それも「核戦争を防止する」世界の医療関係者の集まりに参加する機会を与えて頂いた保団連(全国保険医団体連合会)の活動に感謝したい。「子どもは未来」を信条として診療を行っているつもりだが、子どもの健康を害するのは病気だけではなく親からの虐待や家庭の不和・貧困、戦争などいとまがない。しかし、なんと言っても戦争は最右翼であり、核戦争は世代にわたって人間を苦しめ、被爆者に「生き地獄」と言わしめるほど強烈である。

「はだしのゲン」英語版を薦める筆者

 「はだしのゲン」を読み、核爆弾の威力は破壊・放射能・遺伝子変化によるガン、家族離散と村八分、社会からの差別などあらゆる不幸が襲いかかることを知った。この漫画本が10冊あるのは、被爆してからの生活が如何に過酷であるかを描いているからである。

 3日間(9月4日~9月6日)にわたる会議で、まず核兵器が非人道的で、軽度であってもガンの不安を一生背負わせ、かつその子孫も影響を受けるということが語られた。さらに、世界で起きているテロや虐待について語られ、国による経済的格差の問題なども提示された。人間世界で起きている生き地獄は、やはり人間が作り出しているのだ。IPPNWは、核戦争だけを問題にしてはいない。それにいたる、道筋である健康に光を当て、誘因となる全ての問題点に立ち向かっていると感じた。

 人間の健康も、予防の面から見直されているが、平和な社会、幸せな社会も、人間の健康を努力して守る事から得られるのだ。「核兵器禁止条約」も、この条約のスローガン、「Health Through Peace 2017(平和を介して健康を)」をアッピールして勝ち取られ、採択されたと聞く。核保有国の多くは、採択に応じず、採択国に対して最終決定に従わないように画策しているという。核の傘に守られているという日本も採択を逃れた。唯一の被爆国日本が考えを変え、採択から賛成への票を投じてほしい。核の抑止力ほど当てにならないものは無いのである。

 3日目、日本医師会会長の横倉義武氏が、世界医師会長になると言うことで意見を言われた。核戦争が悲惨であり、この条約を多くの国々が採択し、賛成多数となることを願われたが、日本の態度については、言葉が無かったことが悲しい。

 IPPNWは、世界の子ども達が生まれてきて良かったと感じる環境こそ、この地球に遺すべき最大のプレゼントであることを改めて教えてくれた。37カ国500名の熱い思いに感謝しつつ古都ヨークを後にした。

<『はだしのゲン』英語版の寄贈報告>

 「反核医師の会」日本ブースでは、鶴の折り方の指導に人気が集まり、原爆症で亡くなられた「折り鶴の少女・佐々木禎子さん」の話をしながら国際署名を集めました。その横に『Bearfoot Gen(はだしのゲン)』の英語版を無料で贈るコーナーを設けました。原爆の非人道性をこれほど見事に描いた作品は無いでしょう。漫画という誰にでも理解しやすい方法で、被爆者のみならずその子孫にまで不幸をもたらす兵器の真実を伝える傑作と思います。7名分の枠に6名の希望がありました。Tilman Ruff氏も立ち寄られ、希望されました。お話しではコピー版で読まれたとのことでしたので、シリーズ①から⑩を贈りました。その他5名のうち3名は若い方でヨーク大学の学生でした。

 今回のIPPNW世界大会ではイギリス(4)、オーストラリア(1)、インド(1)からの参加者に6セット寄贈しました。

 

 

はだしのゲン・紙芝居

出版物の紹介


はだしのゲン
『わたしの遺言』
 中沢啓治 著

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