読者からの手紙

女性20歳、キエフ「はだしのゲンを読んで」

まんが『はだしのゲン』を入手した時、私はこの本からは感動を得たり、1945年の日本での出来事を見直すことなど期待していませんでした。
わが国ではまんがは子供達の文学であり、大人には真面目に受け入れられないものとされています。
『はだしのゲン』を見せた私の数人の友達は「このような残酷な絵は子供の心に悪影響をあたえる。」と言いました。でも私はそうではない、と思います。
はだしのゲンの人生を描いたこの物語は単なる日本の歴史ではなく、世界史の暗黒の部分であり、私達はそれを世界支配のために戦う人間の残酷かつ貪欲な欲望の証言者として恥じなければなりません。
これは単に現在なお原爆投下の恐ろしい結末を体験している日本の人々の苦しみを描いているだけではありません。これは改めることの出来ない過ちについての全人類の嘆きであり、絵のように美しい場所の一つにつけられた、癒されることのない傷を持つ地球のうめきです。
しかしながら私達はこれらの暗黒のページを歴史から忘れ去ったり、しわくちゃにして破り捨てる権利を持ってはいません。
私達のみならず、私達の子孫が核戦争のこれ以上にない恐怖を体験しないために、今私達のしなければならないことはこの悲劇の記憶を世代から世代に伝えていくことです。
中沢啓治さんはこのための最上の方法を見つけました。彼は自らの記憶を描いたのです。
ええ、まんが『はだしのゲン』を精神的に受け入れることは大変難しいことですし、絵にショックを受け、本を読みながら泣いてしまいます。それは心の中に深い傷痕を残しながら記憶の中に深く食いつきます。しかしながらこの代償によってのみ人々の心に戦争への嫌悪の念を育てることが出来ます。
でも『はだしのゲン』は広島の原爆投下を語っているだけではありません。
この物語の最も大切なことは、主人公の小さな少年ゲンを例にして、いかにしてこのような苦しみに耐えることが出来るか、恐怖と絶望に打ち勝ち、人々に対する善意を持ちつづけることが出来るか、冷酷にならないでおれるか、いかに自己の力の中に人生を喜ぶ能力を見つけることが出来るかを教えています。
 何よりも命を愛すること!
精神的に弱い私達の世代にとってこの少年は見習うべきこの上ないお手本です。
親達は『はだしのゲン』を子供達に読ませることを恐れるべきではありませんし、自らこの少年の物語を知る義務を負っています。
私や私の未来の子供たちにとってこの本は精神的力を養う一部となることでしょう。
私達の未来に関心を寄せてくださったまんが『はだしのゲン』の作者やそれに関わった人達にお礼を申し上げます。心からありがとう!

 

 

はだしのゲン・紙芝居

出版物の紹介


はだしのゲン
『わたしの遺言』
 中沢啓治 著

関連リンク

アーカイブ