ピースボード「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」報告

ピースボード・おりづるプロジェクト

ヒバクシャ地球一周 証言の航海の報告

 2024年7月26日早朝、18か国21寄港地をめぐる地球一周の船旅を終え、パシフィックワールド号が横浜に帰港しました。105日にわたって船内や寄港地で、対話と平和への訴えを続けた「ウクライナ・ユース・アンバサダー」と「ヒバクシャ地球一周 証言の航海(おりづるプロジェクト)」のメンバーが、活動を報告しました。

 記者会見には、「ウクライナ・ユース・アンバサダー」プロジェクト実現に協力いただいた駐日ウクライナ特命全権大使コルスンスキー・セルギー氏や、共に地球一周したパシフィックワールド号のビクター・アリモフ船長も参加し発言しました。

おりづるプロジェクト・コーディネータ 橋本舞さん

 ウクライナの若者とヒバクシャを乗せて、ピースボートVoyage117が横浜に帰港しました。おりづるプロジェクトのコーディネータとして乗船した橋本舞からは、地球一周した田中稔子さんと小川忠義さん、ユースの2名に加え、長崎で被爆された田中煕巳さんや、米国ネバダ州の核実験の被害を受けたメアリー・ディクソンさんも一部の区間で乗船しプロジェクトに参加したことが報告されました。

 4年ぶりとなったクルーズでのプロジェクト実施にあたり、まず12カ国12都市での活動に重点を置いたといいます。船内での企画については、「今後に向けて、日本によるアジア諸国への侵略の歴史なども含めて、多国籍の乗客との共通認識を築いていける形を目指したい」と語りました。

 また、被爆証言の伝え方について、「被爆当時のことを話すだけでは過去のことになってしまう。日本を最後の被爆地にするために、いかに若者にメッセージや未来をつないでいくか」と模索した結果、ユースと共に証言活動を作り伝える形に辿り着いたことを説明しました。

 

 広島で被爆した田中稔子さん

 6歳の時、広島で被爆した田中稔子さんは、英語での活動も含め、日本国内外やピースボートで多くの証言活動を行ってきました。

 今回の船旅では、「クジラが潮を吹くところを見ました。その時デッキでは、多様な言語で歓声があがりました。同じ感動を、国籍を超えて仲良く分かち合ったのです。私はそこに人間本来のもつ本当の平和を見ました。」

 過去の日本軍によるアジア侵攻についても忘れることなく、心温まる交流を積み重ねながら、核兵器の恐ろしさを伝え続けていきたい、と今後の活動への決意を伝えました。また、共に旅をしたユースの2人や小川さんのお孫さんのような、同じ思いをもつ若手には、それぞれが持つツールを使って、核廃絶の活動を続けていってもらいたい、と締めくくりました。

 

 長崎で被爆した小川忠義さん

 小川忠義さんは、11か国で14回の講演を行い、約1000名の方に参加していただき、それぞれの場所で温かく歓迎を受けたことを報告しました。そして、数ある活動の中で、ニューヨークでの出来事を紹介しました。

 海外での活動では「日本に原爆を落としたアメリカのことをどう思うか」とよく聞かれるので、逆に、米国が原爆を落とした日本をどう思っているかを質問してみたといいます。一瞬の沈黙の後、ある女性から、「優しい文化と美しい風景は好きだが、核廃絶に後向きな日本政府は核保有国である米国政府となんら変わりなく尊敬はできない」という回答があったそうです。期待した答えとは少し違ったものの、ひとつのエピソードとして印象的だったといいます。

 小川さんはこれから、この3ヶ月間の活動について整理をして、今後の活動に活かしていきたいと述べました。

ユース特使の中国出身のロンユアン・フアンさん

 「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」ユース特使として乗船した中国出身のロンユアン・フアンさんは、活動を共にする中で、被爆者の訴えは「平和は人類にとって、魚にとっての水のように不可欠である」ということだと理解しました。

 中国の深圳の受け入れ団体の方が核廃絶について「夫婦関係のように、時折喧嘩することはあっても引っ越しはできないので、両国の関係をうまく処理するしかない」と表現したり、フランスでは核兵器を支持する市民も多く、医療や教育よりも核兵器の研究に多くの予算が充てられていることなど、様々な見解に出会ったエピソードも紹介しました。

 3か月の活動を経て、「自分と異なる意見に出会ったらまずその背景を考える批判的思考を養うこと、そして、政治活動に積極的に参加して意思決定できる立場を目指すこと」が重要だと考えるようになったと報告しました。     (文・橋本舞)

 

【注】4月13日、横浜港を出航したピースボードの「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」(通称 おりづるプロジェクト)が3か月余かけて18か国21寄港地をめぐる船旅を終えて、7月26日、横浜港に無事帰港しました。

 本会からピースボードに寄贈した漫画『はだしのゲン』(日本語版、英語版、中国語繁体字版)をこの船旅で紹介いただきました。

 上記のレポートはおりづるプロジェクトのブログhttps://hibakushaglobal.net/から転載しました。

 

はだしのゲン・紙芝居

出版物の紹介


はだしのゲン
『わたしの遺言』
 中沢啓治 著

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