広島市の学校教材に「はだしのゲン」継続採用を求める声明

2023年2月22日

広島市の学校教材に「はだしのゲン」継続採用を求める声明

                                                                   特定非営利活動法人

                                                                はだしのゲンをひろめる会

                               理事長  白﨑 良明 

 広島市教育委員会が、平和教育プログラムの一環として2013年度から小学3年生の学校教材「ひろしま平和ノート」に採用してきた漫画『はだしのゲン』を2023年度から削除し、別の被爆者の体験に差し替えることが大きく報道されています。

 広島市教育委員会は、この度、平和教育プログラムを「実相の検証」「発信」「発達段階」「最新の情報」の4つの観点に沿って検証した結果、次の問題点を挙げています。①「実相の検証」漫画の一部を教材としているため、被爆の実相に迫りにくい。②「発達段階」浪曲の場面は、児童の実態に合わない。鯉を盗む描写は、誤解を与える恐れがあり、補足説明が必要となるため、教材として扱うことが難しい。③「発信」ゲンの気持ちを考えることに留まり、教材を通して、自分が平和について考えたことを伝える学習となっていない。

(2023年2月8日、広島市教育委員会学校教育部指導第一課・第二課)

被爆の実相をリアルに伝える作品

 『はだしのゲン』の学校教材からの削除には、「時代背景の説明に時間と手間をかけて伝えることが教育の本来の役割」「切り出した場面が分かりにくければ違う場面を使う方法もあったはず」「核戦争の恐れがある今こそ、ゲンの継続採用を求めたい」「広島市議会に市内図書館から『はだしのゲン』を撤去する陳情書が提出されていることが背景にあるのでは?」など様々な意見が本会に寄せられています。

 これまで被爆者の皆さんが国内外で被爆の実相を証言してきましたが、高齢化を迎える中で次世代への継承が急務となっています。その意味で核兵器の残酷さと平和の大切さを描いた『はだしのゲン』の果たす役割は大きいと言えます。『はだしのゲン』はこれまで世界で24か国語に翻訳・出版され、国内外にて多くの子どもたちや若者たちに読み継がれてきた実績があります。戦争を知らない世代に被爆の実相をリアルに伝える最適の作品です。

 私たちは広島市教育委員会が学校教材に『はだしのゲン』を継続採用することを求めます。

『はだしのゲン』連載開始50周年に寄せて

 はだしのゲンをひろめる会は、国内外に被爆の実相と核兵器の非人道性を伝え、核兵器廃絶と平和への思いを継承していくため『はだしのゲン』の普及・読書運動を進める事業を行い、「核兵器のない世界」をめざす運動を発展させることに寄与することを目的(定款第3条)にしている特定非営利活動法人です。2013年のNPO法人設立から10年間の寄贈実績は、プロジェクト・ゲンが翻訳した英語版、ロシア語版を中心に34か国319セットにのぼります。広島市内では国際協力機構(JICA)中国、のぼり平和資料室(広島市立幟町小学校内)、広島県立図書館等にも寄贈しています。

 『はだしのゲン』は、「週刊少年ジャンプ」に連載されて今年6月に50年を迎えます。広島が活動の拠点であるNPO法人ANT-Hiroshimaの呼びかけで昨年暮れに50周年記念事業実行委員会を結成し、今年6月3日~4日、広島市内で多彩なイベントを企画しています。また全国各地で記念事業が行われるよう情報発信していきます。

 本会では「ゲン50周年」記念として、学校図書館や公立図書館等への普及・寄贈活動に積極的に尽力していく所存です。

印刷用PDF:189KB

 

はだしのゲン・紙芝居

出版物の紹介


はだしのゲン
『わたしの遺言』
 中沢啓治 著

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